フィリピン・セブ島でリスティング広告を始める前に知っておきたい基礎知識

フィリピン、そしてセブ島でビジネスを展開される日系企業の皆様。現地のマーケット攻略において、どのような集客施策を行っていますか?
「フィリピンはSNS大国だからFacebook広告だけで十分」
「とりあえずWebサイトを作ったが、アクセスが増えない」
「日本の広告代理店に頼んでいるが、成果がいまいち見えない」
もし、このようなお悩みをお持ちであれば、この記事は貴社のビジネスを大きく変えるきっかけになるかもしれません。
フィリピンは世界有数のインターネット利用時間を誇る国ですが、その消費行動や検索リテラシーは日本とは全く異なります。日本での成功法則をそのまま持ち込んでも、フィリピン市場では通用しないことが多いのです。
本記事では、フィリピン・セブ島の日系企業様向けに、「フィリピンにおけるリスティング広告(Google検索広告)」の基礎から、現地ならではの運用ポイント、そして失敗しないための戦略までを徹底解説します。
フィリピン市場における「リスティング広告」の重要性

まずは、なぜ今、フィリピンで「SNS」ではなく「リスティング広告(検索連動型広告)」に注目すべきなのか、その理由を紐解きます。
SNS大国だからこそ「検索」の価値が高い
ご存知の通り、フィリピンのインターネットユーザーのSNS利用率は世界トップクラスです。FacebookやInstagramは、生活インフラと言っても過言ではありません。
しかし、ビジネスの視点で見ると、「SNSを見ている時のユーザー心理」と「Google検索をしている時のユーザー心理」には決定的な違いがあります。
| 比較項目 | SNS広告 (Facebook/IG) | リスティング広告 (Google検索) |
| ユーザーの状態 | 暇つぶし、情報収集、友人との交流 | 悩み解決、商品の購入検討、業者探し |
| アプローチ | プッシュ型(興味のない人にも表示) | プル型(探している人にだけ表示) |
| 購買意欲 | 「いいな」と思っても後回しになりがち | 「今すぐ欲しい・頼みたい」という緊急度が高い |
| ターゲット層 | 潜在層(まだニーズが顕在化していない) | 顕在層(今すぐ客) |
例えば、セブ島で「エアコンの修理業者」を探している人を想像してください。彼らはFacebookのタイムラインをなんとなく眺めて業者が出てくるのを待つでしょうか? いいえ、間違いなくGoogleやGoogleマップを開き、「Cebu Aircon Repair」と検索するはずです。
フィリピンでは、娯楽としてのSNS利用が圧倒的である反面、「困ったときの解決策」を探すツールとしてはGoogle検索が絶対的な信頼を得ています。つまり、リスティング広告は「今すぐお金を払ってでも解決したいユーザー」をダイレクトに捕まえることができる最強のツールなのです。
日本とはここが違う!フィリピン運用の5大特徴

日本で広告運用の経験がある方ほど、フィリピン市場でのギャップに驚かれます。ここでは、日本とフィリピンの決定的な5つの違いを解説します。
① 言語戦略:英語とタグリッシュ(Taglish)
日本のリスティング広告は日本語一択ですが、フィリピンでは事情が異なります。公用語は英語とフィリピノ語(タガログ語)ですが、ビジネスや検索行動においては「英語」がベースになります。
しかし、ここで注意すべきは「アメリカ英語」や「教科書通りの英語」だけではないという点です。
- 現地の独特な言い回し:
例えば、「求人」を探す際、日本では「Recruit」や「Job」を使いますが、フィリピンでは「Hiring」という単語が非常によく使われます。また、不動産では「Condo for rent」だけでなく、「Apartment」という言葉が、日本人がイメージするアパートとは少し違うニュアンス(中級コンドミニアムなども含む)で検索されることがあります。 - タグリッシュの混在:
ターゲット層によっては、英語とタガログ語を混ぜたキーワード(例:「Murang House and Lot in Cebu」=セブの安い家と土地)などが有効な場合もあります。
② クリック単価(CPC)の安さ
これはフィリピン市場の最大のメリットです。日本や欧米先進国に比べ、フィリピンのクリック単価(CPC)は非常に低く抑えられています。
【クリック単価の目安イメージ】
- 日本: 1クリック 100円〜1,000円以上(業界による)
- フィリピン: 1クリック 5円〜50円程度
同じ広告予算でも、フィリピンでは日本の5倍〜10倍の集客(アクセス数)を見込める可能性があります。これは、特に中小企業やスタートアップにとって、低リスクでマーケティングを始められる大きなチャンスです。
③ 圧倒的な「モバイルファースト」
日本ではBtoB(法人向け)サービスであればPCからの検索が半数を占めることもありますが、フィリピンではBtoBであってもBtoCであっても、アクセスの8割〜9割以上がスマートフォンから行われます。
PCを持っているのは、一部のオフィスワーカーや富裕層、学生に限られます。そのため、広告をクリックした先のランディングページ(LP)が「スマホで見にくい」「PC用のサイトをそのまま表示している」状態だと、成果はほぼゼロになります。
④ 通信インフラの事情(サイト表示速度)
セブ島に住んでいる皆様なら実感されていると思いますが、フィリピンのインターネット回線は日本ほど高速・安定していません。
リッチな画像や動画をふんだんに使った日本の美しいWebサイトは、フィリピンのモバイル回線では表示に時間がかかりすぎることがあります。Googleの調査では、「読み込みに3秒以上かかると53%のユーザーが離脱する」と言われています。
フィリピン向けの広告では、デザインの美しさよりも「軽さ(表示速度)」を最優先する必要があります。
⑤ コンバージョンの定義(ゴール設定)
日本では、Webサイト上での「購入」や「長文の問い合わせフォーム送信」をゴール(コンバージョン)に設定するのが一般的です。しかし、フィリピン人は「長いフォームに入力する」ことや「メールでやり取りする」ことを極端に嫌う傾向があります。
フィリピン市場で成果を出すためには、コンバージョンポイントを以下のようにハードルを下げる必要があります。
- Facebook Messengerへの誘導ボタン
- WhatsApp / Viberへのリンク
- 電話発信ボタン
「詳しくはメールで」ではなく、「今すぐチャットで聞く」という導線設計が、リスティング広告の成否を分けます。
セブ島特化!エリアターゲティングの極意

「フィリピン全土」に向けて広告を配信していませんか? もし貴社のビジネスがセブ島に拠点をおいているなら、それは予算の無駄遣いになっている可能性があります。
フィリピンの人口は約1億1,000万人。その多くがマニラ首都圏(ルソン島)に集中しています。全土配信を行うと、予算の8割がマニラのユーザーによるクリックで消化され、肝心のセブ島の顧客に広告が表示されないという事態に陥ります。
Google広告の機能を使い、以下のような詳細なエリア設定を行うことが重要です。
セブ・メトロエリアの主要ターゲット都市
セブ島でビジネスをする場合、以下の都市をピンポイントで指定、あるいは除外設定を行うことで精度を高めます。
| 都市名 | 特徴・ターゲット属性 |
| Cebu City | ビジネスの中心地。オフィス、富裕層、商業施設が多い。BtoBや高額商材向け。 |
| Mandaue City | 工場やオフィス、住宅が混在。物流拠点や中間層向けサービスに。 |
| Lapu-Lapu City | マクタン島。リゾート、空港関連、語学学校、外国人居住区。観光業や外国人向けサービスに。 |
| Talisay / Minglanilla | セブシティのベッドタウン。住宅関連や生活密着型サービスに。 |
例えば、「セブシティのITパーク周辺のオフィスワーカーにランチの広告を出したい」といった半径指定(1km以内など)も可能です。商圏に合わせた厳密なエリア設定が、費用対効果を最大化します。
広告運用を開始するまでの4ステップ

実際にフィリピンでリスティング広告を始めるための具体的な手順をご紹介します。
STEP 1:Webサイト(LP)の「フィリピン対応」診断
広告を出す前に、受け皿となるサイトが現地に適しているか確認しましょう。
- 全文英語になっているか?(自動翻訳のような不自然な英語ではないか)
- スマホでストレスなく閲覧できるか?
- ページの表示速度は十分に速いか?
- WhatsAppやMessengerのボタンは設置されているか?
STEP 2:キーワード選定(ローカル目線)
ターゲットユーザーが検索しそうなキーワードをリストアップします。ここで重要なのは、「日本人の感覚で英語に訳さない」ことです。
現地のスタッフやフィリピン事情に詳しいパートナーにヒアリングを行い、「現地では実際に何と呼ばれているか」をリサーチしてください。競合他社(現地企業)がどのようなキーワードで広告を出しているか調査するのも有効です。
STEP 3:Google広告アカウントの開設・設定
Google広告のアカウントを開設します。フィリピン法人で決済を行う場合は、VAT(付加価値税)などの税務処理に必要な書類や設定も確認が必要です。通貨設定はフィリピンペソ(PHP)にしておくと、現地の感覚で予算管理がしやすくなります。
STEP 4:少額からのテスト運用とPDCA
最初から高額な予算を投じる必要はありません。前述の通り、フィリピンはクリック単価が安いため、月額数万円〜10万円程度の予算でも十分なデータを集めることができます。
まずは2週間〜1ヶ月程度運用し、「どのキーワードがクリックされるか」「どのエリアからの反応が良いか」を分析し、徐々に予算を最適化していくのが賢い方法です。
よくある失敗事例と対策

最後に、多くの日系企業が陥りがちな失敗パターンと、その対策をお伝えします。
失敗①:日本のLPをそのまま翻訳して使ってしまった
【現象】
デザインが日本的でごちゃごちゃしており、文章が長すぎる。
【対策】
フィリピン人は「シンプルで直感的なデザイン」を好みます。文字量は日本の半分以下に減らし、大きな画像と短いキャッチコピーで訴求しましょう。「結論→メリット→証拠」の順で端的に伝える構成が好まれます。
失敗②:除外キーワードを設定していなかった
【現象】
「Cheap(安い)」「Free(無料)」「Job(求人)」などのキーワードで検索している、質の低いユーザー(客にならない層)からのクリックでお金を浪費してしまった。
【対策】
貴社が高品質・高価格帯のサービスを提供している場合、「Cheap」や「Free」を含む検索では広告を表示させない「除外キーワード設定」が必須です。これを怠ると、問い合わせの質が著しく低下します。
失敗③:問い合わせ対応が遅れた
【現象】
広告からMessengerで問い合わせが来たのに、返信に半日かかってしまい、既読スルーされた。
【対策】
フィリピンのユーザーは「スピード」を重視します。特にチャットの場合、「数分以内の返信」が鉄則です。社内で即レスできる体制を整えるか、チャットボット(自動応答)を導入して、一次対応だけでも即座に行う仕組みが必要です。
まとめ:フィリピンの「今」を捉えた広告運用を

フィリピン・セブ島におけるリスティング広告運用について解説してきました。重要なポイントを振り返ります。
- SNSだけでなく、顕在層を狙える「検索広告」がビジネスの鍵。
- 「英語キーワード」「モバイルファースト」「チャット誘導」が鉄則。
- セブ島に特化したエリア設定で、無駄なコストを削減する。
- クリック単価が安いメリットを活かし、まずは少額からテストする。
フィリピン市場は、日本とは異なるルールで動いています。しかし、そのルールさえ理解し、適切な戦略を実行すれば、日本国内よりもはるかに低いコストで、大きな成果を上げることができる魅力的なマーケットです。
「日本のやり方」を押し付けるのではなく、フィリピンのユーザー行動に寄り添ったマーケティングこそが、貴社のセブ島ビジネスを成功に導く最短ルートとなるでしょう。

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