SEOとリスティング広告の違いとは?フィリピン市場での使い分けをわかりやすく解説

フィリピンに進出し、ビジネスを展開する日系企業の皆様にとって、「Web集客」は避けて通れない課題です。

  • 「Webサイトを作ったのに、問い合わせが来ない」
  • 「広告代理店から提案を受けたが、SEOとリスティング広告のどちらを優先すべきかわからない」

このような悩みを抱えている担当者様は少なくありません。特にフィリピンという異国の地では、日本とは異なるインターネット環境やユーザー行動があるため、判断はいっそう難しくなります。

本記事では、Webマーケティングの二大巨頭である「SEO(自然検索)」と「リスティング広告(検索連動型広告)」について、その仕組みの違いから、フィリピン市場ならではの特性、そしてビジネスフェーズに合わせた最適な使い分け戦略までを、網羅的に解説します。

目次

まずは基礎を理解する:SEOとリスティング広告の決定的な違い

どちらも、GoogleやYahoo!などの検索エンジンでユーザーがキーワードを検索した際に表示されるものですが、その仕組みと役割は「賃貸住宅」と「持ち家」ほどに異なります。

検索結果画面(SERPs)での見え方

Googleで何かを検索したとき、検索結果画面の一番上(または一番下)に「スポンサー」や「広告」という小さなラベルが付いたテキストが表示されます。これがリスティング広告です。

その下、ラベルが付いていない通常の検索結果として表示される部分が自然検索(オーガニック検索)であり、ここでの表示順位を上げる施策がSEOです。

詳細比較表

まずは、両者の特徴を比較表で整理します。

比較項目リスティング広告 (PPC広告)SEO (検索エンジン最適化)
費用の仕組みクリック課金型

表示は無料だが、クリックされると費用発生
クリック自体は無料

※ただし制作費・人件費等の対策コストは発生
表示場所検索結果の最上部・最下部(一等地)広告枠の下(メインエリア)
即効性極めて高い

設定・審査完了後、即座に表示可能
低い

効果が出るまで数ヶ月〜1年以上かかることも
コントロール性自在に可能

キーワード、地域、文言、予算を細かく設定可
難しい

Googleのアルゴリズムに依存。順位の保証はない
ターゲット層「今すぐ客」

購買意欲が高い層にピンポイントで訴求
「そのうち客」〜「今すぐ客」

情報収集層も含めた幅広い層
資産性なし(掛け捨て)

予算を止めると表示も即座に消える
あり(ストック型)

上位表示されれば、長期的な集客資産になる
必要なスキルデータ分析、広告運用スキル、コピーライティングコンテンツ制作力、Web構築知識、アルゴリズム理解

イメージで理解する「狩猟」と「農耕」

  • リスティング広告は「狩猟」です。 お金(弾薬)を使って、今すぐ獲物(見込み客)を狙い撃ちします。即効性はありますが、弾が尽きれば(予算が切れれば)収穫はゼロになります。
  • SEOは「農耕」です。 土を耕し(サイト構造の最適化)、種を蒔き(記事作成)、水をやる(更新・改善)ことで、時間はかかりますが、やがて継続的に作物を収穫できる豊かな農地(資産)になります。

2. フィリピン市場における特殊性

「日本でうまくいった方法」が、フィリピンでそのまま通用するとは限りません。フィリピン市場には、独自の「言語事情」「インフラ事情」「コスト感」が存在します。

① SEOにおける「言語の壁」と「勝機」

【英語キーワードはレッドオーシャン】

フィリピンの公用語は英語です。そのため、現地の顧客をターゲットにする場合、対策キーワードは必然的に英語になります。

例えば、「Cebu Hotel(セブ ホテル)」や「Manila Real Estate(マニラ 不動産)」といったビッグキーワードでSEO上位を狙うとどうなるでしょうか?

競合相手は、フィリピンのローカル企業だけではありません。Agoda、Booking.com、TripAdvisorといった世界的な巨大企業やポータルサイトが競合となります。立ち上げたばかりの企業サイトが、これらのドメインパワー(サイトの強さ)に勝つことは極めて困難です。

【日本語キーワードはブルーオーシャン】

一方で、フィリピン市場には「日本語SEO」という独自の勝ち筋があります。

検索するのは「フィリピン駐在員」「現地採用の日本人」「日本本社の海外担当者」に限られますが、競合サイトの数は圧倒的に少なくなります。

検索ボリューム(数)は少ないものの、「フィリピン 進出 支援」「セブ島 弁護士 日本語」などで検索するユーザーは、決裁権を持つキーマンである可能性が高く、成約率の高い良質なアクセスが見込めます。

② リスティング広告の「コストパフォーマンス」

【クリック単価(CPC)の安さ】

リスティング広告の費用は「オークション制」で決まります。競合が多いほどクリック単価は高騰します。

日本やアメリカに比べ、フィリピン市場はまだWeb広告の競争がそこまで激化していない分野が多く、クリック単価が日本の1/5〜1/10程度で済むケースも珍しくありません。

「少ない予算で多くのアクセスを集める」という点において、フィリピンでのリスティング広告は非常にコストパフォーマンスが良い施策と言えます。

③ インフラ事情とモバイルファースト

【表示速度が命】

フィリピンのインターネット回線は、日本ほど高速・安定していません。また、ユーザーの9割以上がスマートフォンからのアクセスです。

SEOにおいても、リスティング広告の品質スコアにおいても、「Webサイトの表示速度(軽さ)」は非常に重要な評価指標となります。

リッチな動画や高画質画像を使いすぎた「重いサイト」は、表示される前にユーザーが離脱してしまうため、広告費の無駄遣いになるだけでなく、SEO順位も上がりにくくなります。

どちらを選ぶべき?ビジネスフェーズ別の使い分け戦略

「SEOとリスティング、どちらが良いか?」という問いに絶対の正解はありません。会社の置かれている状況(フェーズ)と目的によって、最適な選択肢は変わります。

パターンA:立ち上げ期・スピード重視なら「リスティング広告」

【こんな企業におすすめ】

  • フィリピン拠点を設立したばかりで、すぐに顧客を獲得したい。
  • 期間限定のキャンペーンやイベントの告知をしたい。
  • SEOの効果が出るのを待っている時間的余裕がない。

【戦略のポイント】

Webサイト公開直後は、Googleからの評価がまだ定まっておらず、SEOで上位表示されるまでには早くても3ヶ月、通常は半年〜1年かかります。

ビジネスのスタートダッシュを切るためには、「お金で時間を買う」リスティング広告が最適です。

特にフィリピンは島国であり、エリアごとのターゲット設定が重要です。「マニラ首都圏だけに配信」「セブ島のITパーク周辺半径5kmに配信」といった細かいコントロールができるのも、広告ならではの強みです。

パターンB:安定期・中長期的な資産構築なら「SEO」

【こんな企業におすすめ】

  • 毎月の広告費を削減していきたい。
  • 業界内での権威性やブランディングを高めたい。
  • 「情報収集層」も含めて、広く見込み客と接点を持ちたい。

【戦略のポイント】

ある程度ビジネスが軌道に乗ってきたら、SEOに注力します。

フィリピン市場では、前述の通り英語のビッグキーワードは激戦ですが、「Long Tail Keywords(ロングテールキーワード)」と呼ばれる、3語〜4語を組み合わせたニッチなキーワード(例:「Cebu IT Park Office Space Rent Affordable」など)であれば、上位表示のチャンスは十分にあります。

また、日系企業であれば、日本人ターゲットに向けた日本語ブログ記事を充実させることで、安定した問い合わせ経路を確保できます。

パターンC:最強の「ハイブリッド戦略」

最も推奨されるのは、両者を組み合わせる方法です。

  1. 初期はリスティング広告に全振りする:
    まずは広告でアクセスを集め、売上を作ります。同時に「どのキーワードで検索したユーザーが、実際に問い合わせをしてくれたか」という貴重なコンバージョンデータを蓄積します。
  2. 売れるキーワードでSEO対策を行う:
    広告運用で判明した「成約率の高いキーワード」をテーマに、ブログ記事やコンテンツを作成します。勘に頼ったSEOではなく、データに基づいた確実性の高いSEOが可能になります。
  3. SEOが育ったら広告費を最適化する:
    特定のキーワードでSEO1位が取れたら、そのキーワードに対する広告出稿を停止(または抑制)します。浮いた予算を、まだSEOで上がっていない別のキーワードの広告費に回します。

誤解されがちな「SEOのコスト」について

クライアント様への説明で最も重要なのが、この「SEOの見えないコスト」です。

よく「SEOは無料だから、とりあえずSEOでお願いします」という要望がありますが、これは半分正解で半分間違いです。

SEOにかかる3つのコスト

  1. コンテンツ制作コスト(Time & Money)
    Googleは「ユーザーにとって有益な情報」を上位に表示します。そのためには、専門知識に基づいた、読みやすく正確な記事を書き続けなければなりません。社内の担当者が書くにしても膨大な時間がかかりますし、プロのライターに依頼すれば費用が発生します。
  2. テクニカル対策コスト(Expertise)
    フィリピンの通信環境に合わせたサイトの高速化、スマホ対応、Googleのクローラーが巡回しやすいサイト構造の設計など、エンジニアリングの知識が必要です。
  3. 機会損失コスト(Opportunity Loss)
    これが最も見落とされがちです。SEOのみに頼り、結果が出るまでの半年間、サイトへのアクセスがほぼゼロだった場合、その期間に得られたはずの「見込み客からの問い合わせ」をすべて逃していることになります。

SEOは「広告費」という科目の請求書は来ませんが、「人件費」や「制作費」、そして「時間」というコストを投資して行うマーケティング活動であることを理解する必要があります。

フィリピン市場におけるリスティング広告の注意点

一方で、リスティング広告にも注意すべき点があります。

除外キーワード設定の重要性

フィリピンでは、購買意欲の低いユーザーからのクリックが発生しやすい傾向があります。

例えば、法人向けサービスを提供しているのに、就職活動中の学生が「Job(仕事)」「Hiring(採用)」「Salary(給料)」などのキーワードで検索し、広告をクリックしてしまうケースです。

また、「Free(無料)」「Cheap(激安)」などのキーワードも、質の低い問い合わせに繋がります。

これらのキーワードで広告が表示されないようにする「除外キーワード設定」を徹底しないと、安いクリック単価のメリットが消え、無駄なコストが垂れ流しになってしまいます。

英語広告文のニュアンス

広告文(見出しや説明文)の英語が不自然だと、フィリピンのユーザーは警戒してクリックしません。

単なる翻訳ソフトの英語ではなく、現地で使われている言い回し(例:アパートを指す言葉のニュアンスの違いなど)や、フィリピン人に刺さる訴求ポイントを理解したコピーライティングが必要です。

まとめ:現状分析からの最適な選択を

フィリピン市場におけるSEOとリスティング広告は、どちらが優れているかという対立関係ではなく、「相互補完」の関係にあります。

  • 今すぐ結果が欲しい、地域を絞りたいなら「リスティング広告」
  • 長期的な資産を作りたい、ニッチな日本人層を狙うなら「SEO」

最も危険なのは、「Webサイトさえあれば誰かが見つけてくれるだろう」という受け身の姿勢です。

広大なインターネットの海の中で、御社のWebサイトは無人島のようなものです。

そこに橋を架けるのがSEOであり、高速船を出すのがリスティング広告です。

まずは自社の現在のフェーズ(立ち上げ期なのか、拡大期なのか)と、確保できる予算、そしていつまでに成果が必要かというゴール設定を明確にしましょう。その上で、この2つの武器をどのように配分して使うかが、フィリピンビジネス成功の鍵を握っています。

この記事を書いた人

ウェブ解析士

■経歴
【ADWAYS Philippines INC.】
大手日系WEB広告代理店のフィリピン支社にて教育・金融・エンタメなど様々なクライアントのデジタルマーケティング支援・広告運用を担当。

【株式会社電通アイ・アンド・シー・パートナーズ】
電通のデジタル領域専門の子会社にて、自治体から大企業、中小企業向けに認知~獲得・採用・観光誘致など様々なデジタル戦略を企画。デジタル領域全体のディレクション、広告運用を担当。

【TABICEBU TRAVEL AND TOURS INC.】
セブ島の旅行会社の取締役・Chief Marketing Officerとしてリスティング広告・SNS広告・YouTube広告・Googleアナリティクス・LINEなどを駆使し、売れる仕組みを構築し続けている。

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